月刊エレクトーン9月号別冊/ 700円(税込み)
8月22日発売
音楽倶楽部 VOL.3 (株式会社ヤマハミュージックメディア発行)より



真夜中に気勢を挙げる、中年の
一個団体。
その正体は、アマ・ジャズ・バンドの面々だった!
もはや、日付変更線を越えようとしている真夜中。明らかに中年といっていいお年頃の10人近い面々が、ビール片手にさわやかに、晴れ晴れとした顔で「お疲れさま〜!」と気勢を上げる。″いったい、こやつら何者だ?″と居合わせた人が、小首をかしげたとしても不思議じゃないかもしれない。
さて、このさわやか中年の一個団体は、『ハイライト オールスターズ』の面々である。学生時代をジャズに興味をもって過ごした人なら、大学のビック・バンドの双頭である、早稲田大学ハイソサエティ・オーケストラと、慶應大学ライト・ミュージック・ソサエティの名前にきっと聞き覚えがあるはずだ。『ハイライト オールスターズ』は、この2つの学生ビッグ・バンドのOB達で結成したバンドだ。
この日も、土曜の夕方からみっちり4時間の練習を終えての″真夜中の一杯″だった。 充実した時間を、いい汗流して過したおじさん達。なるほど″さわやか″″晴れ晴れ″もうなずけるというものだ。
大学を卒業して、学生やめても
音楽はやめられなかった、僕たち
「早稲田大学と慶應義塾大学といえば、図式として敵同士というイメージがあるんですけど、なぜか一緒にビッグ・バンドをやることに・・・(笑)」とバンドのコンサート・マスター、杉山正明さん(早稲田大学出身)。
学生時代には、一緒に練習をしたりすることはなかったが、当時の学生バンドの地方公演のようなものや合同のコンサートなどではよく一緒になった。でも、お互いにライバル意識はあったらしい。
「演奏を聴きに行って、あそこは音のバランスが崩れてたとか・・・。さんざん、陰で枇評、批判してた(笑)」
「それはおたがい様(笑)」
それが、突然バンドを結成することになったのは、1981年7月4日のこと。創立メンバーが大学を卒業して、2年目のことである。
「早稲田の場合、学校を卒業するときにコンサートがあって、それが終わった時点で自動的にハイソのOB会に入会する。卒業と同時に、いったん音楽人生に区切りをつけるんですよね」
「慶応は、そこまでハッキリしたものはないんですよね。ただ、慶應の場合、OBは金も出すが、口も出す(笑)」
「でも、卒業したから、ハイ音楽やめますって具合にはいかない。学生やめられても、音楽やめられないって気持ちがどこかにあった」 そんなある日、たまたま昭和54年卒業の早稲田と慶應のOBが数人、飲み屋で集まった。
そのとき、慶応大学OBのトランペットの佐藤さんとサックスの藤井さんが、自分たちで多重録音したビッグ・バンドのテープを持ってきた。このテープを聴きながら飲んでいたら「また、バンドやりたいな」と誰かのひと言。そして、めでたく早稲田大学と慶應義塾大学の混合ビッグ・バンドが結成されるのである。
「健全な自己顕示欲は、健全な肉体をつくる」
これがバンドのスローガン!
現在のメンバーはサックス、トランペット、トロンボーン各5名、それにピアノ、ベース、ドラムで18名。半分が結成以来のメンバーだ。
「ビッグ・バンドの場合、生音のダイナミックさが魅力だと思うんです。だから、ステージ上での音のボリュームやバランスがしっかりとしていないと成り立たない」 (杉山氏談)
人数が多い分、コンマスである杉山さんのリードが重要なのではとたずねると、「僕のリーダーシップというよりも、メンバーの目立ちたがりやの精神がいいのかも(笑)。僕らのバンドの場合は、前に出る音をみんなが応援するみたいな演奏の仕方ですね。それがハイライトで演奏している楽しさだと思う」
さらに、彼らは上を目指し続けている。「目指しているのは、オリジナリティー。バンド内にアレンジャーもいるし、自分たちのものを作っていこうという意識はとても高いと思う。しかも、オリジナルはどこのバンドが演奏するより、自分たちの演奏が一番上手い! (笑)」
ポジティプな志向の分、練習はプロ以上に真剣だ。隔週末には、ほとんどのメンバーが参加して、平均約4時間練習する。多人数だけに、パートの練習は各人が家で行うという。杉山氏いわく、
「家で練習してきた人は上手い。『健全な自己顕示欲は、健全な肉体を作る』 っていうのが、バンドのスローガンなんです」
「ただ、40代も越えると体力的に厳しい・・・」
「だけど、楽器吹いてるとヨガの呼吸法に近くなるから、体にはいいかも」
最後が健康談義になるのは、中年バンドならではのご愛嬌。でも、彼らの演奏を聴けば、健全な肉体がいかに演奏に貢献しているかが如実にわかる。これからも、このスローガンを守って、パワフルでオリジナリティー溢れる演奏を続けて欲しい。
(注:編集部のご厚意により記事全文の転載の了解を頂いております)