2.見上げてごらん、夜の星を   6才

いずみたく作曲の名曲。ディズニー「星に願いを」に比肩しうる。

  みー あーげてー ごらん   というフレーズ。
  C△7 C/Bb A7    というコードである。

「みーあーげて」の「あー」の音、ミの音(3度)がこの曲全体のセンチメンタリズムを決定している。3度の音がなぜセンチかというと、これは人間の起源にさかのぼらねばなるまい。しかし、そんな時間はない。それはおいといて、次のベースBbがなんとも歌謡曲の中では、というか、私の生後3年間の人生の中では未体験ゾーンだった。しかもメロはミの音のまま。+11である。このリディアン的移動が、夜の星を見上げる不安感、期待感、苦しい日常、貧しい生活、などもろもろのストレスを一気に噴出させている。しかし、そのすぐ後、メロはソという安定に向かうが、コードがA7。となるとメロの音は7thだ。ここで、ただの安定ではなく、なにやら大人っぽい世界がパアッと開ける。ここがAmだったら、こんな様々な感情はわきあがらない。そして次は「夜の〜」でDmといういったんの安定をみるが、「ほしを〜」でまたもやA7をちらつかせ、さらにここは歌謡曲禁断のb13だ。センチなメロに禁断のコード。次でさらに極まる。Dmからの展開は遅らされ、「ちいさーな」はめいっぱいDmが芳醇に使われ、次の「ほーしーをー」でようやくG7 C△と2−5展開しておちつく。しかし、この「ほーしーをー」がこの曲でもっとも印象的であり、人々の心に焼き付いてはなれないのは、「D−E♭−E」というメロの半音進行のためだけでなく、またもや真ん中のE♭の音がG7に対して−13なのである。
かようにこの曲はたぐいまれなるセンチメンタルでメランコリックなメロディを持っているにもかかわらず、ジャジーなコード(50年代のインチキジャズ歌謡とは違う)がつけられており、テンションが極めて不安感や期待感を醸し出している。(しかしそう感じさせない)そのくせ、日本でしかない昭和30年代の板塀からかすめ見る風呂屋の煙突ごしのスモッグな星空を見事に表現しているのは、時代感覚や商業意識とは対極にある天才いずみたくの楽曲の完全なる普遍性というものなのだろう。
私の両親が記憶しているのは、この曲を聴いた6才の私が「倒れそうに悲しい曲だね。」とほざいたというのだから、マイナーぎらいの、メジャーの曲にこそ、悲しみを感じるという現在の私の音楽的趣味はこの曲が起因してこうなったということがいえる。マイナーの曲って「ねっ、私って悲しいでしょう。」という押しつけがましいところがあり、腹の中はちっとも悲しくない、という感じがする。メジャーの悲しさは、悲しさをぐっとこらえて笑っている強さみたいなものがいっそう悲しさを強調する。この辺の心理分析はさらに深く行けるが、それはまたの機会に。

(すいません、ハイライトにマイナーの曲なくて)


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