Beatles “white album” side B


Jacket IMG1968年発表。1968年といえば私は11才。実際に聞いたのは、6年生の春休みに静岡へ赴任中だった新婚の従兄弟夫妻のところへ遊びに行った時なのだが、電流が走るというのはこのことだ。

この辺の年頃は、とにかくスポンジのような吸収力でインパクトを受けまくる世代だが、1968年は実に色々なものを体験させてくれた年だった。3億円事件、東大紛争、金嬉老、参院選に石原慎太郎、青島幸夫、横山ノックが当選、あしたのジョー、ハレンチ学園にサンスタートニックシャンプー、メキシコオリンピックではサッカー釜本銀メダル、ビーモン幅跳び世界新、初の背面飛びなどなど。映画だと、ロミオとジュリエット、2001年宇宙の旅、あの胸にもういちど、猿の惑星、ビートルズのイエローサブマリンと、もう、インパクトありまくりの布陣。 

そんな中で聴いたWHITE ALBUMはそれまでの来日公演や「抱きしめたい」から抱いていた客観的なビートルズの印象ではなく、もう、ダイレクトに体の中にググッと入ってきた。受身で摂取されたメデイアからの情報ではなく、生身の人間としてビートルズとの一体感が感じられた。そしてそれは初めて経験する音楽との一体感に他ならなかった。WHITEは一般的評価としては、4人がバラバラで作った散漫な作品、と言われていたが、私にとってはビートルズの魅力、音楽性が凝縮した作品。ポップあり、ロックンロールあり、フォークあり、サイケあり、テープコンクレートあり、フルオケあり、サックスアンサンブルあり、フィドルあり、ストライドピアノあり、クラプトンあり、フラメンコあり、1920年代アメリカ風ラブソングあり、ゴング打ち鳴らしあり、飛行機の爆音あり、豚の鳴き声あり、鳥の鳴き声ありと、とにかく満載なのだ。

で、なぜB面かというと、従兄弟が豚の鳴き声が入っている面白いレコードだよ、と子供扱いしくさってからに、B面3曲めPIGGIESをかけたのがきっかけ。結果B面を一番聞くこととなった。おかげで、1曲目MARTHA MY DEARのピアノは弾けるし、4曲目DON’T PASS ME BYのバイオリンも手がけた。ギターにいたってはROCKY RACOON、BLACKBIRD、MOTHER NATURE'S SON、I WILLとコピーをしまくった。いまだにギターを持つとBLACK BIRD。ピアノに座るとMARTHA〜だ。

それで、静岡から帰ってすぐに銀座のハンターへ行き、2枚組4000円也を買ってもらった。4枚のポートレイトと色々な写真をコラージュしたポスターつきだ。当然ながら、この日から、何年もこれらは部屋に貼られる。

そしてB面以外の探索を開始した。当然ながら他の面も名曲が満載である。ロックンロールの名曲、YER BLUES、BACK IN THE USSR、EVERY〜MONKEY、WHY DON’T WE〜ROAD、BIRTHDAY。フォークの名曲は上記ギターでコピーした曲の数々。クラプトンのギターが泣く、WHILE MY GUITAR GENTRY WEEPS、そのほかジョンのシャウトが悲しいHAPPINESS IS A WARM GUN、とんでもないメロディにとんでもないアレンジのSAVOY TRUFFLE、GLASS ONION。ジョンケージから啓示を受けたREVOLUTION NO.9その激しいテープコンクレートの嵐が遠のくと聞こえてくるストリングスの静かな響き、GOOD NIGHT。美しさここに極まってレコードは終わる。

「抱きしめたい」の分析のところでも触れたが、ビートルズの特長は、それまでのポップバンドになかった変なコード進行、とりわけマイナーとメジャーの見事なコンビネーションとオーギュメントなどのワサビの利かせ方のうまさ。そしてクリシェの多用によるスムーズな流れ。アメリカ音楽にありがちなコブシに頼ったブルース的メロディでない、世界のどの民族が歌っても感動を呼ぶ、美しいメロディラインそのものの普遍性。メロディ・ラインにも勝るとも劣らないサブメロディ(対旋律)の見事さ、奇抜であり、深く、才気にあふれた歌詞(特にジョン)。楽器そのものや楽器編成のアイデア、新しい技術の導入、様々な異ジャンルの吸収、それを実現してきたジョージマーチンの編曲とスタジオワーク。何よりも彼らの演奏力。これらに加えて、彼ら自身のカリスマ性、すばらしい言動の数々。それを演出したブライアン・エプスタインのマネージング。変な髪形、変なコスチューム。

これらが絶妙なタイミングで時代とシンクロした結果、時代を超越した文化を作り得た。 

WHITE ALBUMは既に完成されていたこれらのビートルズ神話を具体的な形で音楽に落とし込んだ仕上がりになっており、その音楽との距離感がとてもクールでよい。アルバムの完成度から言ったらリボルバーやサージェントだろうが、サージェントのホットさに比べると、冷静かつ淡々とした楽曲の数々にビートルズ個々人の本当の実力を見ることができる。女性関係、アップルの経営難、マハリシへの落胆、などの壁が、彼らの音楽を逆に研ぎ澄ましたのかもしれない。

 ちなみのアルバム発売日の11月22日は、私の誕生日。


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